研究内容

研究内容

基礎看護学研究室について

高齢者人口割合が増加する中で、人々が健康で豊かに暮らせるためには、医療の質向上が求められることは言うまでもありません。医療の高度化は進み、救える命を増やすことができ、また病や障害を持ちながら、「生きる」、「生活する」ことが可能となりました。超高齢社会において、ますます対象者の生活を支える看護師の役割は重要であり、その可能性は大きいと考えます。

  • 看護ケアの成果モデル開発と有効性の検証
  • 熟練看護師の技の可視化に関する研究
  • 看護職の健康管理のためのICT技術の開発とクラウドサービス活用、仮眠環境に関する実証研究

F. Nightingaleは、看護とは患者の生命力の消耗を最小にするように、環境を含めた生活を整えることを意味すべきであると述べています。つまり、対象者の希望とニーズをもとに、日々の生活を整えるケアを実現させていくことが必要です。【対象者が私たち看護師に何を求めているのかを追求し続けること】、【専門的知識をもとに、対象者とその家族に心を寄せ、その人にあった看護ケアを提供できること】を目指していきたいと考えています。

これまでの研究

私たちの教育と研究の基盤は、臨床現場にあります。臨床場面においては、患者の立場から考えると、同じ時間で看護ケアを受けるのであれば、誰もがより安全で質の高い心地よいケアを受けたいと希望するでしょう。病院内および在宅で働く看護師の実践の中には、多くの質の高い技術が存在しています。しかし、看護師のスキルは、各自のものとして個人内で完結していることが多いように感じています。私たちは、看護師が身につけてきた暗黙知,効果があると経験的に実感している実践内容を可視化し、その有効性を実証することにより、人々に質の高い看護ケアを提供することが実現すると考え、研究に取り組んでいます。さらに、その成果を教育内容に積極的に導入し、展開しています。このような活動を臨床看護師の協力のもと、ひとつひとつ積み上げ、実践→研究→実践の循環を実現させ、研究成果を社会に還元したいと考えています。

また、上記のような看護ケアを実現するために、患者にとって‘良い看護師’の離職を削減しなければ、臨床看護の安全とサービスの質は確保できないと考えています。医師と共に医療の主軸を担うべく看護師が数年で離職してしまうという状況は後を絶たず、生産年齢人口が減少する現状においては、看護職の不足は世界的課題となっています。2025年、看護職員の必要数は約200万人が見込まれ、約3万人~13万人の需給ギャップがあることが推計されています。高齢化に伴い、ケアを必要とする患者数が増加することを考えると、看護職の離職を阻止するための新たな取り組みをしなければ、人々が健康で自立して暮らせる社会は実現できません。つまり、看護職の離職は、人員不足という問題にとどまらず、今目の前にいる患者やその家族に提供される医療の質低下につながり得る課題であるということです。

このような背景をもとに、2015年総務省 戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)における「地域医療の質向上と看護職の健康管理のためのICT技術の開発とクラウドサービス活用の実証研究」の委託事業から始まり、現在は交代勤務を行う看護職の仮眠、看護職のバーンアウトを予測するアルゴリズムの開発などに焦点を当て、産学連携活動を推進しています。地域に暮らす人々が安心して医療が受けられる社会の実現を目指して、全国の看護職の離職率抑制に寄与し、「病院の健康経営」を促進するサービスの発展につなげていきたいと考えています。